エネルギー コモディティ

2016年原油市場の展望

原油

現物市場の需給環境は改善へ

来年の世界の石油需要の伸び率は、中国需要は鈍化が続くが、インドなどの新興国需要の増加により前年比+120万バレル/日の見通し。来年後半には伸び率は縮小するが+100万バレル/日は維持する見通し。OPECの生産量は、イラン産原油が来年前半には市場へ本格復帰することが予想されるが、サウジが実質ベースで供給を徐々に削減することなどにより、現在の3,170万バレル/日程度から3,200万バレル/日へ僅かな伸び(+30万バレル/日)に留まる見通し。一方で、非OPECの生産量は、米国の生産量が来年後半には前年比-50万バレル/日となり、年平均で-30万バレル/日を予想。総じて、2016年の世界の石油供給量合計の伸び率は、ほぼフラット(横ばい)となると予想する。

イラン産原油の供給量は、現在280万バレル/日から来年末までに350万バレル/日程度まで増加する見通し。また、市場への供給が直ちに可能なFloating Storage(海上にあるタンカーに備蓄されている原油在庫)が推定4,000万バレル程度存在することも原油価格の上値を限定する圧力となるであろう。

しかしながら、米シェールオイル生産者の平均生産コストはWTI=40-45ドル/バレル程度であることやWTI=30ドル/バレル台ではリグ当たりの生産効率は悪化することにより来年後半からの米原油生産量の伸び率は前年割れとなると予想する。また、航空業界などの石油需要家による買いヘッジ(コンシュマー・ヘッジ)が例年に比べ著しく低いこと(米航空業界のヘッジ比率は前年比40%程度)などを考慮すると、WTI=30ドル台(1年先の先物で40ドル台前半)が続くと買いヘッジが活発となることが予想される。

一方で、米シェールオイル生産事業者も例年よりアンダーヘッジ(ヘッジ比率が低い状態)であることも確認されており、来年、原油価格が上昇に向かい、WTI価格が50-55ドルでは売りヘッジ(プロデューサー・ヘッジ)が活発となることが予想され、価格の上昇(特に急速な上昇)を阻む要因となろう。

地政学リスクによる供給懸念は暫く不在であるが、現在約40万バレル/日を市場に供給しているリビアでは、今年12月に、東西に分立していた二つの主要な政治勢力である首都トリポリの勢力と東部トブルクの勢力が和解案で合意した。同地域のISの勢力は今のところ弱体化しているとみられるが、生産拠点と輸出港を握る勢力が異なる以上、来年も同国による供給量に対する懸念が完全に払拭できなない状況が続く公算である。

来年前半までは、北米の暖冬による米原油在庫の増加、及びイラン産原油の市場復帰により上値の重い展開が続き、短期の投機筋の売りによりWTIは30ドル程度までの下落リスクは持続する。しかしながら、来年後半に向けて、米シェールオイル生産量の減少と主にインドなどの新興国需要の伸びにより、グローバル市場の過剰在庫は徐々に減少し、現物の需給環境は改善に向かうことにより、原油価格は、来年前半にはボトムアウトすると予想し、来年一年を通してWTIは、40‐55ドル/バレル、ブレントは、45‐60ドル/バレルのレンジで推移すると予想する。

原油、石油製品の現物市場をグローバルな視点で考察すると供給過剰、過剰在庫の焦点は、米国市場から徐々にグローバル市場へシフトしつつあることが確認されている。また、需給環境の改善は、OPECの減産により始まる可能性より、米国の生産量の伸び率鈍化の確認が起点となる可能性が高く、WTI価格は、ブレント原油より回復(上昇)のペースが早くなり、WTI-ブレントのスプレッドは反転し、WTIがブレントを上回る局面もあろう。

アースエレメンツ・アドバイザーズ/リサーチ 2015年12月18日

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