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【米国株】トランプのオバマケア廃止と米国ヘルスケアセクター

トランプヘルスケア政策

米国株:トランプのオバマケア廃止と米国ヘルスケアセクターの見通し

トランプ大統領の「オバマケア廃止」

トランプ大統領は大統領就任初日の20日、オバマケア(医療保険制度改革法「アフォーダブル・ケア・アクト(ACA)」)の「迅速な廃止」を新政権として目指すとし、初の大統領令でオバマケアの見直しを指示し、前政権からの政策転換の姿勢を示した。

トランプ政権は、医療保険の規制とメディケイド(低所得者向け医療保険制度)の運営で州政府に大きな権限を付与し、オバマケアを実質的に骨抜きにする意向だ。共和党もオバマケアは、州政府、家計、ヘルスケア業界などに経済や規制面での負担を強いるとしており、オバマケア廃止を一貫して訴えている。

また、トランプ大統領は就任前の2017年1月11日の会見で米国における医薬品価格の高さを痛烈に批判しており、今後、医療保険制度の改革が本格的に始まる見通しだ。

ヘルスケア法案の採決中止(3/25、市況ニュース)
トランプ政権のヘルスケア法案の採決延期(3/24、市況ニュース)

米国ヘルスケア(バイオ・医療品株)セクターの市場動向

米ヘルスケア株は、トランプ氏の当選が決まった直後は、金融株などとともにトランプ銘柄として買われたが、その後はトランプ大統領の医療品価格を巡る発言などにより伸び悩んでいる。

S&P500指数(SPX)のヘルスケアセクター銘柄で構成されるS&P500ヘルスケア指数(SP500-35)は年初から+1.06%、過去1年で+2.80%上昇している。一方で、S&P500指数は年初から+2.66%、過去1年で+23.40%とトランプ大統領のヘルスケア政策への不透明感からヘルスケア株は伸び悩んでいる。

個別銘柄では医薬品のファイザー(PFE)は年初から-3.23%、過去1年で+6.39%。ユナイテッドヘルス(UNH)は、年初から+1.95%、過去1年で+45.62%。メルク(MRK)は年初から+3.66%、過去1年で+22.47%

世界のヘルスケア業界の動向

今後、新政権のヘルスケア政策により、米国の医薬品市場は、様々な動きが予想されるが、今後の世界の医薬品市場の見通しのポイントをまとめたい。

医薬・医療関連業界向けのデータ情報サービスを提供する米QuintilesIMS社(https://www.quintilesims.com/)は、2016年12月6日にヘルスケア・医療品・製薬業界の動向と見通しに関する調査報告書「Out lookfor Global Medicines through 2021:Balancing Cost and Value」を発表した。同報告書には以下の点があげられている。

  • 世界の薬剤支出は2021年に1.5兆ドルに達する見込み。
  • 世界の薬剤支出はインボイス価格(仕切り値)ベースで年率4-7%で増加、2021年に1.5兆ドルになる。2014年-2015年にはC型肝炎治療薬、抗がん剤などにより9%伸びたが、これらの影響は2021年までに衰退する。
  • 世界の薬剤支出は、特に先進国市場についてはオンコロジー、自己免疫疾患治療薬、糖尿病治療薬での著しいイノベーションにより加速される。米国は引き続き世界最大の医薬品市場であり続け、今後5年間に予想される市場成長のうち53%に貢献する。
  • 後期開発ステージ・パイプラインにある2240品目が2021年までに平均して年45品目の新規化合物(NAS)をもたらす。これらの新薬はがん、自己免疫疾患、代謝系疾患、神経系疾患を含む幅広い疾病のニーズに答える。
  • 米国の医薬品市場はインボイス価格(仕切り価)ベースで2015年の12%から半減し、2021年まで6~9%の成長が続くと予想される。この成長率の低下はC型肝炎治療薬により加速された成長の終焉と特許切れの薬品の影響による。

米国ヘルスケア(バイオ・医療品株)セクターの見通し

製薬会社は、医師へのキックバックを禁じた連邦法とメディケイド(低所得者向け医療保険)に含まれている最良価格規則が改正されれば、適正な価格をもとめることができる。また、医療機器会社は、オバマケアに基づき米国内の売上に2.3%の物品税が課されていたが、これが撤廃されれば業績は押し上げられる。一方で、オバマケアに基づき被保険者が増えたたため売上は増加した側面もある。したがって、オバマケアの廃止は、ヘルスケア業界にとって、プラスの側面もマイナスの側面もあり、今後オバマケアに代わる法律の内容が重要となろう。

リスクとしては、トランプ大統領は米国における医薬品価格の高さを痛烈に批判しており、今後、新政権が、薬価統制に向けて動き始める可能性があることである。具体的には、製薬業界が、医薬品開発のコストの高さを正当化できなければ、政府がメディケア(高齢者向け医療保険)に薬価の価格交渉権を与えることができるよう、規制や法案の見直しが検討される可能性がある。これらの大部分は議会の承認プロセスが必要となるため直ちに実現できるかは不透明であるが、今後も「ヘッドラインリスク」には注意が必要となろう。

もうひとつ忘れてはならないのは法人税改革である。23日トランプ大統領は自動車などの製造業大手と会談し、法人税率を現行の35%から15─20%の水準に引き下げる意向を表明した。減税が実行されれば、米国内のヘルスケアセクターの企業は、例外なくその恩恵をうけることになる。

米国ヘルスケア株は高配当かつバリュエ―ションは割安

米国ヘルスケア株は、他セクターと比べて高配当である。米国大手製薬会社のセクター全体の配当利回りは2.85%と、S&P総合500種の2.4%を上回っている。また、S&Pの製薬株の向こう12カ月予想利益に基づく株価収益率(PER)は直近が14.8倍で、過去3年平均の16.4倍を下回っており、現時点でバリュエ―ション面では金融やコモディティセクターと比べ上昇の余地があるとの見方ができる。(PER、配当利回りは、ロイター)

結論

総じて、米国ヘルスケアセクターは、オバマケアの廃止とトランプ政権のヘルスケア政策の進展に依存しているため、先行き不透明感は今後も続くとみられる。ただ、法人税減税はいずれにしても実行される可能性が高い。また、新政権のヘルスケア政策において、価格の交渉権はメディケア、すなわち政府が持ち、オバマケア廃止によりメディケア被保険者が減るというようなワーストケースがおきることは、製薬業界がトランプ氏とも共和党とも一定のパイプをもっていることを考慮すると現時点では可能性は低い。したがって、今後は「ヘッドラインリスク」への警戒は必要となるが、長期投資の市場セクターとしては十分に魅力的な対象といえよう。また、価格調整局面では、下落要因を見極めながら、バリュエ―ション面で割安な銘柄へセレクティブに投資を検討することも賢明な選択肢となろう。そして、個別銘柄の選定においては、今後、一定の価格競争も予想されるため、コスト競争力、財務基盤の面で優位な大手企業が競争優位となる可能性も考慮する必要がある。

米国株価指数見通し

米国株式市場見通し


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参考:米国ヘルスケア(バイオ・医療品)セクターへ投資が可能な金融商品

■ 国内から購入可能なETF

  • バンガード米国ヘルスケアETF(VHT) | 1年リターン(TR)6.84% | 5年リターン(TR)16.52%
  • ヘルスケアセレクトセクターSPDRファンド(XLV)| 1年リターン(TR)5.37% | 5年リターン(TR)16.03%
  • iシェアーズグローバルヘルスケアETF(IXJ)| 1年リターン(TR)1.36% | 5年リターン(TR)13.07%

■ 米国ヘルスケア株(S&P500ヘルスケア指数、数字は過去1年間リターン)

・ファイザー、メルク、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ユナイテッドヘルス、ギリアド・サイエンシズ、アムジェン、ブリストル・マイヤーズ・スクイブなど。

Abbott Laboratories ABT:NYQ +1.67% AbbVie Inc ABBV:NYQ +6.22% Aetna Inc AET:NYQ +12.64% Agilent Technologies Inc A:NYQ +28.71%, Alexion Pharmaceuticals Inc ALXN:NSQ -15.06%, Allergan plc AGN:NYQ -27.76%, AmerisourceBergen Corp ABC:NYQ -7.64%, Amgen Inc AMGN:NSQ +0.37%, Anthem Inc ANTM:NYQ +10.61%, Baxter International Inc BAX:NYQ +26.63%, Becton Dickinson and Co BDX:NYQ +18.23%, Biogen Inc BIIB:NSQ +8.75%, Boston Scientific Corp BSX:NYQ +35.39%, Bristol-Myers Squibb Co BMY:NYQ -23.69%, C R Bard Inc BCR:NYQ +25.53%, Cardinal Health Inc CAH:NYQ -10.67%, Celgene Corp CELG:NSQ +6.49%, Centene Corp CNC:NYQ +6.22%, Cerner Corp CERN:NSQ -7.86%, Cigna Corp CI:NYQ +9.02%, Cooper Companies Inc COO:NYQ +40.80%, Danaher Corp DHR:NYQ +26.16%, Davita Inc DVA:NYQ -1.64%, Dentsply Sirona Inc XRAY:NSQ -4.27%, Edwards Lifesciences Corp EW:NYQ +19.62%, Eli Lilly and Co LLY:NYQ -8.52%, Endo International PLC ENDP:NSQ -79.80%, Express Scripts Holding CoESRX:NSQ -4.18%, Gilead Sciences IncGILD:NSQ -22.62%, HCA Holdings IncHCA:NYQ +20.85%, Henry Schein IncHSIC:NSQ +7.44%, Hologic In cHOLX:NSQ +10.84%, Humana Inc HUM:NYQ +21.71%, IDEXX Laboratories IncIDXX:NSQ +82.23%, Illumina Inc ILMN:NSQ -7.04%, Intuitive Surgical Inc ISRG:NSQ +26.85%, Johnson & Johnson JNJ:NYQ +11.26%, Laboratory Corporation of America Holdings LH:NYQ +19.49%, Mallinckrodt Plc MNK:NYQ -26.78%, McKesson Corp MCK:NYQ -18.73%, Medtronic PLC MDT:NYQ -1.72%, Merck & Co Inc MRK:NYQ +18.51%, Mettler-Toledo International Inc MTD:NYQ +33.23%, Mylan NV MYL:NSQ -32.78%, Patterson Companies Inc PDCO:NSQ +1.25%, PerkinElmer Inc PKI:NYQ +6.62%, Perrigo Company PLC PRGO:NYQ -51.44%, Pfizer Inc PFE:NYQ +2.21%, Quest Diagnostics Inc DGX:NYQ +42.11%, Regeneron Pharmaceuticals Inc REGN:NSQ -25.99%, Stryker Corp SYK:NYQ +25.66%, Thermo Fisher Scientific Inc TMO:NYQ +6.68%, UnitedHealth Group Inc UNH:NYQ +43.43%, Universal Health Services Inc UHS:NYQ +1.61%, Varian Medical Systems Inc VAR:NYQ +13.14%, Vertex Pharmaceuticals Inc VRTX:NSQ -6.40%, Waters Corp WAT:NYQ +15.98%, Zimmer Biomet Holdings Inc ZBH:NYQ +13.84%, Zoetis Inc ZTS:NYQ +23.52%,

アースエレメンツ・アドバイザーズ/リサーチ 2017年1月27日 7:00

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