エネルギー コモディティ

原油市場の動向と見通し2017年2月

原油、石油

OPEC、ロシアの減産遵守率と米シェール増産懸念

原油相場の動向:WTI価格は51-54のレンジ相場

昨年11月30日にOPECと非OPECによる協調減産が合意されて以降、米国および世界の過剰在庫は早期に解消されるとの楽観的な見方が優勢となり、WTI相場は11月30日に20日移動平均45.72を上抜き12月28日には54ドルまで上昇した。

今年に入るとイラン、イラク、ロシアなどの減産順守率に対する不透明感や米シェール生産者による増産が加速することへの懸念が意識され、WTI相場は51ドルを割り込む局面もあった。しかし、1月後半に入ると、OPEC加盟国の減産順守率が市場予想に反して高いことがOPEC各国発表のデータやロイター調査などで明らかになると、価格は持ち直し、51-54ドルのレンジ相場が続いている。

OPEC+ロシアの減産遵守率

原油相場は、二つの懸念が上値を抑えている。1つは、昨年合意されたOPEC加盟国とロシアの減産順守率に対する懸念である。OPEC加盟国は、過去の生産枠に対する遵守率は良いときで80%台である。サウジは生産遵守の優等生として認識されているが、イランは、最大3000万バレル相当と想定される海上在庫(Floating Storage)の存在があり、これは今回の減産対象から除外されていることから、減産合意以降、すでに1000万バレル以上を市場に放出している(トレーダー筋)。ロシアに至っては、過去に減産合意した実績がないため、今回が初めての「宿題」となり、国営石油会社の指揮系統や監視体制などが不安視されている。

この減産遵守率の問題については 1月21日-22日にウィーンで開かれた監視委員会とその後ロイターがおこなった調査によって、減産合意が概ね守られていることが明らかになり、現時点では懸念はやや和らいでいる。ロイターの調査によると1月減産幅は、OPEC加盟国は116万バレル/日、ロシアは10万バレル/日としており、OPECは82%の遵守率、ロシアは合意減産幅の3分の1を達成したとしている。当初想定の減産順守率50-70%を上回る結果となり、当面は懸念は和らいだと評価できる内容だが、今後の各国の動向を引き続き注視する必要があろう。

米シェール増産加速の懸念

もうひとつの懸念は米シェール生産者による増産である。米国の原油生産量は、原油価格の下落をうけて16年7月には869万バレル/日まで減少したが、直近では892万バレル/日まで回復している。また原油生産に必要なリグ(石油掘削機)の数は、直近では566と前年比+62(12%)増加している。この回復を支えているのが、テキサス州中西部にあるパーミアン盆地(Permian Basin)のシェールオイルである。パーミアン盆地のシェールは現在218万バレル/日を生産しており、米国の生産量増加分の約6割に寄与している。

今年に入り、Exxon Mobil Corp (XOM)、Occidental Petroleum Corp (OXY)、 Noble Energy Inc (NBL)などはパーミアン盆地において合計9000億ドル規模の投資計画を発表している。また、Pioneer Natural Resources(PXD)、Endeavor Energy Resources LP、Chevron Corp(CVX)、EOG Resources Inc(EOG)など同地域の主要なシェール生産者は生産体制を拡大している。

米シェールオイルの生産コストは40ドル-50ドルが中心であり、パーミアン盆地のシェールオイルの生産コストは35ドル-40ドルとされている。したがって、今後、原油価格が50ドルを上回っている限りにおいては、パーミアン盆地を中心に多くのシェールオイルが生産を拡大し、米国の原油生産量の回復に寄与することが予想される。

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今後のWTI価格の見通し

原油相場の見通しを考える際、まずは、OPEC、ロシアの減産順守率は今後注視する必要があり、当社は、実質の合計減産幅は140万バレル/日程度となると予想する。また、パーミアン盆地の米シェールオイルは、年末までに70万バレル/日程度まで増加し、米国の原油生産量は17年末には920万バレル/日程度まで増加すると予想する。

WTI価格は、米製油所の定期メンテナンスにともなう季節的な原油需要の減少により、しばらくは50-55ドルのレンジ中心の動きを想定している。ただ、1月後半以降にヘッジファンドなどの投機筋のポジションは先物、オプションともに大幅に増加していることを考慮すると、向こう1-3カ月以内にファンドのポジション整理などにより再び50ドルを試す可能性もあり警戒は必要であろう。

一方で、米トランプ政権が、イランに対しミサイル実験などを巡り、新たに制裁を課す可能性が再び浮上している。現時点では、同国の原油輸出が直接影響をうける可能性は高くないとみているが、今後、新政権の対イラン政策次第では、原油貿易に影響が出る可能性も否定できない。制裁が発動された場合、その内容によってはヘッジファンドなどの投機筋が反応し、WTI価格は一時的に50ドル台後半まで上昇する可能性もみておく必要もあろう。

今年、後半(7月・8月以降)以降は、米国のドライブシーズン(ガソリン需要期)、中国、インドなど新興国におけるガソリン、ナフサ、LPGなど軽質石油製品需要の増加により、世界の現物在庫は10月-12月には前年比で減少に転じ、需給バランスは改善されると予想する。当社は、今年10月-12月のWTI価格は58ドルと予想する。

林田貴士(はやしだたかし)

アースエレメンツ・アドバイザーズ/リサーチ 2017年2月3日


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