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トランプ政権下における日本の自動車メーカー

自動車

メキシコに進出している日系自動車メーカー

2月10日に開催される日米首脳会談では、米国やメキシコに進出している日系自動車産業についての議論が交わされる予定だ。トランプ大統領は雇用の拡大と貿易赤字の縮小を目指しており、年約700億ドルの赤字がある対日貿易についても批判を続けている。1月23日にはトランプ氏の発言を受けてトヨタは米工場に約6億ドルを追加投資すると表明したが、2月7日発表の米貿易統計によると対日貿易赤字はドイツを抜いて2位になった。その8割強は自動車関連の輸出が占めており、米国の北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に注目が集まっている。

北米における自動車市場

北米における自動車市場は堅調で、16年の新車販売台数は15年比0.4%増の1755万台となり、2年連続で過去最高を更新した。ガソリン安により消費者のニーズは乗用車からSUV(多目的スポーツ車)やピックアップトラックなどの大型車への需要へシフトしている。北米での日本車の販売台数は約660万台。現地生産が進み、日本からの輸出は約160万台である。日本からの輸出は高級車が中心である。

多くの日系企業が米国生産を行っており、現地生産の割合はトヨタ自動車が7割(メキシコを含むNAFTA域内で生産したもの。米国内に限定すると現地生産比率は5割)、日産自動車は8割、ホンダは9割である。特にホンダの工場のほとんどが北米にあるのでトランプ大統領の発言の影響は一番受けにくい。一方、富士重工業は北米市場の販売は約6割を日本から輸出している。マツダは北米に生産拠点を持たず、北米向けは日本とメキシコで生産している。

トヨタの北米事業は利益の4割を占める

トヨタ自動車は6日、17年3月期通期の連結業績を上方修正した。純利益は前期比26%減の1兆7000億円と従来予想より減益幅が小さくなった。これは営業利益の4割を占める北米販売が増加したこと、円安の影響を受けたためである。トヨタは供給力向上のためにピックアップトラックを生産するテキサス工場で土日稼働などにより生産能力を向上させた。また、メキシコの工場でも1億5000万ドルを投資し、ピックアップトラックの生産能力を6割引き上げる予定であるが、トランプ大統領から批判を受けている。トヨタの16年4~12月期の北米生産台数は152万9000台で過去最高だった。一方で日本からの輸出台数は約8%減った。

トランプ政権の米自動車政策

トランプ米大統領は、就任式の宣誓スピーチにおいて「Buy American Hire American」と発言していた通り、日米首脳会談後も米国内に工場を置く企業を優遇し、米国人の労働者の雇用を強く求めることが予想される。また、トランプ大統領は「メキシコ製の自動車に35%の関税をかける」と述べているが 単純にその文字通りとなれば、日本の自動車メーカーにとって影響は避けられない。

ただ、安倍首相は、2月20日の日米首脳会談、そして米国滞在期間を通して、自動車メーカーを含めた日本の産業界にとってワーストシナリオを避けるための交渉をおこなうとみられている。日本経済新聞の報道によると、「日米成長雇用イニシアチブ(仮称)」といわれる日本政府が米国の雇用拡大を促す経済包括策の検討を始めており、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を米インフラ事業投資に充てる案が準備されているとの報じられている。これらはあくまでもひとつの報道内容に基づく想定であるが、安倍首相が米雇用促進やインフラ投資を後押しするパッケージを提案し、米国が受け入れた場合、数十万人規模の雇用創出につながることが予想されるため、日本の経済界が最も避けたいことをそのまま日本へ要求することはないと考える。

また、35%の関税を課すというこの政策は、米国とメキシコ間のエネルギー貿易にも大きな影響をあたえることになる。現在米国は対メキシコのエネルギー貿易収支は年間約120億ドル(16年実績)の黒字であり、これには米エネルギー業界を重要視するトランプ政権も敏感なはずだ。

そして、米自動車大手GM、フォード、フィアット・クライスラーの3社は、米国内での新規雇用を発表しながらも、メキシコへの投資も継続しており、この35%関税は、米自動車業界全体にとっても業績を後押しするものではない。

自動車関連株の見通し

総じて、トランプ政権の政策は、「メキシコ製自動車への35%の関税」のみの影響を考えることは極端であり、日米首脳会談で議論されることが予想される新しい経済協力の枠組み、米国の対メキシコ通商政策、NAFTAの再交渉、米法人税減税(35%から15─20%)などとセットでの影響を見極める必要があろう。ただ、当面は市場見通しの不透明感が続くことから、自動車メーカーおよび自動車部品メーカーの株価は、上値の重い展開が予想される。また、米国のドル高けん制や欧州選挙など影響により一時的な円高により一定のボラティリティは想定しておく必要があろう。ただ、当社は、17年中に米新政権の自動車政策や日米の経済協力に関する新しい枠組みが明らかになれば、18年以降には株価は安定し、再びバリュエ―ションが再評価されると予想する。

米国株価指数見通し

米国株式市場見通し

参考:自動車株

  • トヨタ自動車(株) (7203
  • 日産自動車(株) (7201
  • ホンダ (7267
  • マツダ(株) (7261
  • 富士重工業(株) (7270
  • いすゞ自動車(株) (7202

アースエレメンツ・アドバイザーズ/リサーチ 2017年2月9日


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