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フランス大統領選挙:日程、仕組み、候補者、公約、金融市場への影響

2017年フランス大統領選と金融市場への影響

フランス大統領選の日程とその仕組み

フランス大統領選の日程が近づいている。フランスの大統領選挙は、いわゆる「二回投票制」を採用している。第一回投票で有効投票数の過半数(50%を超える)の得票に達する候補がいなければ、上位2候補による決選投票をおこない、有効投票の過半数の支持を受けた候補が大統領になる仕組みである。この仕組みにより、第一回投票、または決選投票で必ず過半数の支持を受けたものしかフランス大統領になれない。

投票の日程は、4月23日(日曜日)に第一回投票、5月7日(日曜日)には決選投票がおこなわれる予定だ。決選投票は、必ず実施されるということではなく、第一回投票で過半数の得票に達する候補がいない場合のみおこなわれる。決選投票では、第一回投票の上位2人が決選投票で勝敗を決める。

フランス大統領選の持つ意味

フランス大統領選は、5年間のフランス国政を担う大統領を選ぶ選挙であるが、欧州そして国際社会にとってそれ以上の意味を持つ。なぜなら、有力候補の一人である極右・国民戦線(FN、フロンナショナル)党首のマリーヌ・ルペン氏は、EU離脱(フレグジット)の是非を問う国民投票の実施を公約に掲げているからだ。

ルペン氏の勝利は、EU離脱に必ず直結するとは限らないが、反EUを公約で掲げている候補者が過半数の有効投票を得る以上、その可能性が極めて高くなることは間違いない。

世界的な反グローバリズム、ポピュリズム台頭の流れの中、英国、米国に続き、フランスが自国優先の道を選び、EU離脱となれば、欧州そして世界の分断への流れが一層強まることになる。経済面では英国のEU離脱に続き、EUのGDPの約2割を占めるフランスが離脱すれば、欧州経済にとって大きな打撃となる。政治面ではポピュリズムの流れがさらに強まり、今秋のドイツ総選挙にも影響を与えることになろう。

EUは、二度と戦乱の地にしてはならないとの誓いから生まれたが、フレグジット(フランスのEU離脱)は、EUの存続自体を危うくするものであり、世界の不安定化は避けられない。

「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン党首の公約はトランプ米大統領を強く意識

マリーヌ・ルペン氏(国民戦線(FN))は、「フランス第一」旗印とする大統領を目指すとしており、「自国優先」を軸に、「EU離脱の国民投票の実施」、「ユーロの代わりにフランを再導入」、「難民・移民の受け入れを大幅に削減」などポピュリズム的な政策を掲げ、トランプ米大統領を強く意識した内容となった。

一方で、ルペン氏と決選投票での対決の確率が最も高い、中道・無党派のエマニュエル・マクロン前経済相の公約は、「親EU」、「単一通貨ユーロの維持」など国民戦線の公約との差別化を意識したものとなった。

マクロン氏、決選投票で当選確実

(2017.5.8更新)
5月7日(日曜日)に実施されたフランス大統領選の決選投票の結果、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン元経済産業デジタル相(39)が極右政党のルペン候補を破り、勝利することが確実になった。
エマニュエル・マクロン氏、史上最年少で仏大統領に就任へ

マクロン氏、ルペン氏が第1回投票を通過し決選投票へ

(2017.4.24更新)
4月23日(日曜日)に実施された第1回投票の結果、マクロン氏、ルペン氏が勝利し、決選投票に進むことになった。仏内務省の最終集計結果によると、得票率はマクロン氏24.01%、ルペン氏21.30%、フィヨン氏20.01%、メランション氏19.58%、アモン氏6.36%となった。

開票率70%台まではルペン氏がリードしていたが、開票率80-90%でマクロン氏が逆転し、その後トップを守り一位で通過した。フィヨン氏は決選投票でマクロン氏を支持すると表明したが、メランション氏はどの候補者も支持しない意向。

当初有力視されていた共和党の元首相フランソワ・フィヨン氏は妻への不正給与疑惑、中道・無党派のエマニュエル・マクロン前経済相には同性愛者との不倫疑惑が浮上、国民戦線のマリーヌ・ルペン氏にも欧州議会の予算から自身のスタッフに不正に給与を支給させた疑いなどにより混戦が予想されていたが、ほぼ直前の世論調査を反映する結果となった。

最新世論調査(最新結果を随時更新)

最新世論調査結果
[2017.5.3]
世論調査(ルモンド/CEVIPOF):決選投票の得票率予想マクロン59%対ルペン41%

[2017.5.3]
世論調査(IFOP):決選投票の得票率予想マクロン60%対ルペン40%

[2017.5.5]
世論調査(オピニオンウェイ):決選投票の得票率予想マクロン62%対ルペン38%

[2017.5.5更新]
世論調査(ELABE):決選投票の得票率予想マクロン62%対ルペン38%

[2017.4.24更新]
世論調査(HARRIS):決選投票の得票率予想マクロン64%対ルペン36%

[2017.4.24更新]
世論調査(IPSOS):決選投票の得票率予想マクロン62%対ルペン38%

[2017.4.24更新]
世論調査(FRENCH2TV):決選投票の得票率予想マクロン62%対ルペン38%

 

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仏大統領選候補者の主な公約

マリーヌ・ルペン氏 極右・国民戦線党首
・「反EU」、「ユーロ離脱」を目指す。EU離脱の是非を問う国民投票を行う。域内の移動の自由を定めた「シェンゲン協定」から脱退し、ユーロに代わりフランを再導入
・「反イスラム」、難民・移民の受け入れを大幅に削減
・憲法に「自国第一」を明記する憲法改正を目指す
・国内産業に手厚い保護を打ち出す「フランス第一主義」
・現行法人税33%を中堅企業は24%小企業15%に引き下げ
・農業向けには補助金をEU基準ではなくフランス政府主導で決める
・輸入品には3%の関税、これを財源に低所得者に最大月1500ユーロを支給
・外国人労働者への課税
・国防費増額、警察官など増員、新装備の国内軍事産業からの調達

エマニュエル・マクロン 中道・無党派 前経済相元経済産業デジタル相
・「親EU」、単一通貨ユーロは維持し、「シェンゲン協定」にとどまる。
・歳出削減と公共投資のバランス重視の構造改革を進め財政再建を図る。17年の財政赤字についてGDP比2.9%にすることを守る。
・最大で12万人の公務員の削減、公的保険改革で600億ユーロの歳出削減
・500億ユーロをエネルギーやインフラへ公的投資
・現行の法人税率を現行の33.3%から25%に引き下げ

フランソワ・フィヨン 中道右派 共和党
・元首相 サッチャー元英首相を信奉し、小さな政府を志向する「緊縮派」
・50万人の公務員の削減、および1000億ユーロの歳出削減
・現行の法人税を25%への引き下げ、付加価値税の引き上げ
・伝統的な価値観に基づいた保守的な社会・家族政策

ジャン・リュック・メランション 急進左派 左翼党共同党首
・脱NATO
・1000億ユーロ(約11兆6000億円)の景気刺激プログラム
・自国経済の主権拡大に向けたEU条約の再交渉
・企業の従業員解雇の制限、経営幹部の報酬規制、最低賃金の15%引き上げ
・一部の年金支給開始年齢の60歳への引き下げ

フランス大統領選の金融市場への影響

フランス国債利回りとドイツ国債利回りはともに上昇
フランス国債とドイツ国債の利回りは今年に入りともに上昇した。フランス国債10年利回りは年初0.667%から3/10時点で1.1140%まで上昇、ドイツ国債10年利回りは年初0.190%から3/10時点で0.484%まで上昇した。フランス、ドイツともに今年選挙を控えていることにより、両国からの資金流出が加速していることが大きな要因である。

フランス国債利回りとドイツ国債利回りのスプレッド(差)は拡大
フィヨン氏やマクロ氏への疑惑などが報じられ、ルペン氏の支持率が上昇すると、フランス国債利回りは上昇、ドイツ国債の利回りは低下する場面(1月後半~2月後半)もあった。仏独国債利回りの差(スプレッド)は、1/24時点で0.463から、2/21には0.786まで上昇した。短期的なリスク回避のため、フランス国債売り、ドイツ国債買いがユーロ圏内でおこなわれていることを示している。

フランス国債利回り,ドイツ国債利回りチャート
フランス、ドイツ国債利回りは上昇

金価格の上昇
ユーロ圏からの逃避資金の受け入れ先として、最も目立っているのは金市場である。ニューヨーク金先物市場は、年初1151ドルから一時(2/27時点)1257.40まで上昇した。その後、米利上げの早期実施観測に伴い3/10時点では1200.70まで売られた。利上げペースの議論は残るものの米利上げが今年、来年と確実視されているなか、これだけ堅調に推移している背景には、トランプ政権や米経済の先行き不透明感などもあげられるが、最も大きな要因はユーロ圏からの逃避資金が流入していることであろう。

今後のフランス大統領選の金融市場への影響と見通し
フランス選挙の投票日がさらに近づくにつれて、今後も上述の3つの傾向は続くことが予想される。選挙前の期間において、フランス国債からドイツ国債へ資金シフトする流れと同時に、両市場から金市場への資金流入も続くであろう。ただ、決選投票日が近づき、ルペン氏がマクロン氏との支持率の差を縮めた場合、ドイツ国債の利回りもさらに上昇し、金市場へ資金が集中することが予想される。そして、今年の米利上げペースにある程度めどが立ち、市場が織り込んでいれば、金市場に加えて、米国債へも資金が流入することが予想される。これは、ドル通貨、そして米国債への信認が比較的強い場合、言い換えると、利上げペースなどの不確実性がある程度後退し、米国債利回りの水準が比較的安定していれば米国債が金市場に代わり資金逃避先となるからである。

そして、マクロン氏が決選投票において勝利した場合(当社メインシナリオ)は、フランス国債には買い戻しが入ることが予想される。またフランスやイタリアの株式市場にも資金が再流入し、金融セクターを中心に反発するであろう。ただし、金市場については、当社は、今年5月にはドイツの地方選、9月には連邦議会選などを控えていること勘案すると、一定のリスク回避需要により堅調に推移すると予想する。

<欧州選挙日程>
17年3月15日オランダ総選挙/3月ドイツ地方選(ザールラント州)/4月23日・5月7日フランス大統領選/5月17日ドイツ地方選(シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州とノルトライン=ヴェストファーレン州)/6月11日・18日フランス議会選/9月24日ドイツ連邦議会選

欧州株式市場見通し

金市場見通し

参考:金ETF

  • ETFS 金上場投資信託(1672
  • 純金上場信託(現物国内保管型)(1540
  • SPDRゴールド・シェア(1326
  • 金価格連動型上場投資信託(1328
  • 国内金先物価格連動型上場投信(1683

 

アースエレメンツ・アドバイザーズ/リサーチ 2017年3月13日

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