エネルギー コモディティ

天然ガス市場の動向と見通し2017年3月

天然ガス、LNG

シェールガス回復により、需給改善に遅れ

天然ガス価格は2月に一時年初来23%下落

天然ガス先物相場は、昨年12月以降、北米の好調な暖房需要と米シェールガス生産業者による供給の減少を背景に堅調に推移した。NY天然ガス直近限月先物は12月28日時点で14年12月ぶりの高値3.930ドルをつけ、その後も、1月の平均価格は1月=3.291ドルと高値圏で推移した。

1月後半からは、北米の平均気温が平年比で上昇を始め、2月以降は史上2番目の暖冬となるペースで気温が推移し始めると天然ガス相場は下落に転じた。暖房需要を表わす全米のHDD(毎日の平均気温と基準温度65度F(18度C)との差を積算した数値)は12月863から2月には600まで減少し、平年を約24%下回り、史上1番の暖冬であった昨年をも約14%下回った。

この気温上昇をうけて暖房需要は大幅に減少し、ロングポジション(買い建玉)を積み上げていた投機筋もポジションを解消し、2月21日には年初来23%安の2.564ドルまで下落した。3月以降は、昨年比ではHDD(≒暖房需要)はやや増加したものの、平年比では約10%-15%下回っており、直近では2.90-3.00ドル付近で取引されている。

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ガス在庫

米国ガス在庫は、直近3月16日に発表された3月10日時点のEIA在庫統計によると2,242bcfと昨年比で9.5%下回っているが、12年-16年の5年平均を21.4%上回っている。暖房需要期の終わりとなる3月末時点の在庫水準は、1月、2月の気温上昇により、市場予想(1400から1600bcf)より高い水準の2,000bcf程度となる見通しである。ただ、在庫水準は、過去5年平均レンジ内におさまっており、現時点では17年から18年のガス市場を圧迫する水準にはないと評価できる。

パイプラインガスとLNG輸出が需要を牽引

17年の需要は、石炭から天然ガスへの発電用燃料転換を含めた発電需要は鈍化する中、産業用需要の増加、メキシコへのパイプライン輸出需要の増加、LNG輸出需要の増加の恩恵を受ける見通しである。当社は、17年の需要は、前年比で5bcf/日増加すると予想する。

米国はメキシコへ16年には平均3.7bcf/日(約35億ドル相当)のパイプラインガス(パイプライン経由のガス)を輸出しており、前年比約3割のペースで増加している。また、昨年からアルゼンチン、チリ、ブラジルなど南米へのLNG輸出は増加しており、今年に入りアジアへの輸出も堅調である。今年、中部電力、東京電力、関西電力など国内電力会社も米国産LNGを調達している。

当社は、メキシコへのパイプラインガス輸出は、パイプラインインフラの整備拡大により、今後15%程度のペースで増加し17年4.26bcf、18年には4.90bcfへ増加すると予想する。LNG輸出については、インフラの整備に加え、仕向地制限が少ないという米国産LNGの契約上の理由により、今後も需要は堅調に推移し、当社は、16年平均0.6bcf/日から17年には2bcf、18年には3bcf程度に増加すると予想する。

17/18年冬季暖房需要については、今年と昨年と暖冬が続いたことを踏まえ、当社は3年連続の暖冬の確率は極めて低いことから、少なくとも今年の冬季需要を上回ることを予想する。

供給はパイプライン建設の進捗次第

17年の供給については、カナダからの輸入減少がマイナスとなるが、17年後半からはパイプラインインフラの稼働により供給量は拡大する見通しである。当社は、米国生産量と輸入量を加えた供給量は前年比1.7bcf/日程度増加し、平均79bcf/日となると予想する。

米国北東部のシェールガス田MarcellusやUticaなどのさらなる供給拡大には、パイプラインインフラの制約が課題となっている。北東部のTCO Leach XpressやNorthern Accessの両パイプラインは、今年に入り米当局の建設許可がでており、17年後半には稼働が予定されている。

一方で、米国の中堅シェール生産会社は、17年度のヘッジ比率が例年より低く、また長期先物価格低下によりヘッジ価格が低いことから、今年は生産拡大には、さらに慎重になる可能性もある。

天然ガス価格の見通し

天然ガス価格の見通しについては、シェールガスの生産量が4月-6月期に上振れする可能性があるため、同期間は価格下落リスクはやや高くなる。また、1-3月期に価格が急落したことにより投機筋のロングポジションが回復するには少し時間がかかる可能性がある。17年を通しては、価格の急な上昇の可能性は限定されるものの、堅調な需要により需給タイト化の大きなトレンドに変わりはない。これらを考慮し、当社は4-6月期の天然ガス価格見通しを3.00へ(-0.15ドル)下方修正する。7月以降の価格見通しについては従来の価格に据え置きする。

天然ガス価格見通し

林田貴士(はやしだたかし)

アースエレメンツ・アドバイザーズ/リサーチ 2017年3月19日

 

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