エネルギー コモディティ

原油市場の動向と見通し2017年5月

原油オフショアリグ

OPECと非加盟産油国による協調減産と米シェールオイルの戦い

原油先物相場の動向:WTI価格は年初から44-54のレンジで推移

原油先物は、昨年11月30日にOPEC加盟国とロシアなど非加盟の主要産油国が協調減産を決定したことにより、米国および世界の過剰在庫は早期に解消されるとの楽観的な見方が優勢となり、年初から3月初旬までは50ドルから54ドルのレンジでの推移となった。3月8日に発表されたEIA週間石油在庫統計で、原油在庫が市場予想を大幅に上回ったことをきっかけに、ヘッジファンドのロングポジション解消により、50ドルを割り込み3月22日には47.01ドルまで下落した。その後、協調減産の延長案の浮上により、原油先物は、上昇に転じ4月11日には53ドル台まで回復したものの、シェール生産拡大観測により再び50ドルを割り込み、5月5日には43.73まで下落した。5月15日にサウジとロシアが減産の9カ月延長の必要性で合意したことで、9カ月延長への期待から、原油は50ドル台を約1カ月ぶりに回復した。

石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国の協調減産の動向

OPEC加盟国と非加盟の主要産油国の合計21カ国は、昨年10月の生産水準を基準に、合計約180万バレルの減産に取り組んでいる。OPEC加盟国は、116万バレル/日の減産義務を負っているが、減産順守率は、サウジ、クウェート、カタールなどの貢献により、向上している。4月のOPEC月報(2次ソース)によると、4月のOPEC13カ国の生産量は、3173万バレル/日、減産義務を負うOPEC11カ国(イラン、リビア、ナイジェリアの除く)の生産量は2967万バレル/日となり、減産順守率は111%となった。4月のIEA月報によると、加盟13カ国の生産量は3178万バレル/日、加盟11カ国の生産量は、2985万バレル/日、減産順守率は96%となった。一方で、ロシアなど非加盟の産油国10カ国の減産順守率は、56万バレル/日の減産義務に対し、4月時点で69%とみられており、未然低い水準にあり課題となっている。OPEC月報とIEA月報でデータに差異があるが、当社は、減産合意に基づく参加国21か国の減産順守率は、4月時点で少なくとも92%に達していると推定する。

世界の石油需要の動向:伸び悩むインドの石油製品需要

世界の石油需要は、中国の需要がけん引する形で緩やかに増加している。1-3月平均の世界の石油需要は、前年比108万バレル/日(約1.1%)増の9,658万バレル/日となった。一方で、米国、インドの需要が伸び悩んでいる。米国のガソリン需要は、直近で4週平均で931万バレル/日と前年比2.6%減少している。また、一時堅調であった米国のディーゼル需要も直近では407万バレル/日と前年比1%減少している。インドでは、モディ首相の高額紙幣の廃止による混乱の影響により、ナフサ、重油などを中心に石油製品需要が伸び悩んでおり、1-3月の石油製品需要は前年比で3%減少している。

*データは、国際エネルギー機関IEA、米エネルギー省EIAより

スポンサーリンク

グローバル市場の原油在庫と石油製品在庫の水準:過剰在庫の解消を阻む海上在庫

OECD各国(≒先進国)の原油と石油製品を含む、世界の商業石油在庫は、30.25億バレルと、過去5年平均に比べ、約11%高い水準にある。米国の原油と石油製品の在庫は4月時点で13.41億バレルと過去5年平均を約16%上回っている。また、米国原油在庫は、5.28億バレルと、過去5年平均に比べ、約29%高い水準にある。OPECは、協調減産により、世界の石油在庫水準を5年平均まで減少させることを目標としているが、年初から海上在庫を中心に減少しているため、商業在庫としてデータに反映されにくい状況となっている。

*データは、IEA、EIAより

米シェールオイル生産の動向

米国の原油生産量は、直近(5/12)のデータによると、930.5万バレル/日と、昨年10月以来初めて前週比で減少に転じたものの、前年同週比+51.4万バレル/日(約+6%)、年初から+35.9万バレル/日(約+4%)と堅調である。米シェールオイルの生産量は、パーミアン盆地、イーグルフォード盆地の堅調な回復にけん引され、517万バレル/日(4月平均)と前年比+21.8万バレル/日(約+4%)、年初から+54.1万バレル/日(約+6%)の伸びで増加を続けている。

*データは、EIAより

OPECと非加盟の主要産油国の協調減産の延長

OPECの定例総会が、5月25日にウィーンで開催され、同日にロシアなど他産油国と協議を行い、協調減産の延長の是非を最終的に判断する予定となっている。

世界の産油国の財政は、引き続き厳しい状況にあり、原油価格の下支えが必要になっている。財政再建と経済多様化を進めているサウジは、18年にサウジアラムコ社のIPOを控えていることもあり、今年中(遅くとも18年3月まで)に世界の原油の過剰在庫を圧縮することを目指している。

米シェールオイルの生産が増加を続ける中、減産が延長されない場合、原油在庫、または石油製品在庫を含めた商業石油在庫が、過去5年平均を下回る水準に達するには、当社分析によると、18年半ばまでかかる可能性がある。これは、昨年の減産合意以降、原油先物価格が上昇したことで、多くのシェールプロデューサーが生産ヘッジ(販売価格の固定化のための売りヘッジ)をおこなったこと、そしてグローバル市場における海上在庫が予想以上に潤沢であったことなどが主な要因である。

したがって、OPECと主要産油国が目指す需給の均衡化を早期(17年末まで)に実現するためには、減産延長が「最低条件」となる。

当社は、メインシナリオとして、現行の水準、すなわち昨年10月比-180万バレルとほぼ同水準で、6カ月の減産延長が決定されると予想する。サウジとロシアは9カ月の延長を提案しているが、イラクが強い難色を示しているため、現時点では実現できるか不透明だ。一方で、今回の合意で、リビア、ナイジェリアに適用された免除枠、実質的な増産が可能なイランに適用された特別枠などの詳細は変更される可能性はある。イラクに免除枠や特別枠が与えられる形であれば、9カ月延長となる可能性も考えられる。また、非加盟国が新たに参加する可能性もある。そして、OPECが、減産幅を拡大する案を検討していることが報じられているが、非常事態時の補足的なオプションとしての合意など以外は現実的には合意形成が難しいとみられる。

スポンサーリンク

減産延長決定後の原油市場の見通し

OPEC加盟国は、年末にかけて緩やかに増産し、116万バレル/日の減産幅に対し、90%以上の順守率を維持、100万バレル/日程度の減産が平均で維持されると予想する。非加盟産油国の減産順守率は、平均で70-80%となると予想する。また、ナイジェリア、リビア、カザフスタンやブラジルのディープウォーターなどによる供給増加を考慮すると、OPEC非加盟産油国全体の供給量は75万バレル/日増加すると予想する。

米シェールオイルの生産量は、年末までに40万バレル/日増加し、メキシコ湾岸地域の生産も増加することにより、米国の原油生産量は、年末までに45万バレル/日の増加となると予想する。米シェールオイルの生産コストは40ドル-50ドルが中心であり、パーミアン盆地のシェールオイルの生産コストは35ドル-40ドルとされているため、今後もシェールオイルが米国の原油生産量の回復に寄与するであろう。ただ、米国の独立系掘削会社では、シェールのフラッキング(水圧破砕法)による採掘に携わる労働者を十分に確保するのが困難な状況となっている。人手不足が続けば、米シェールオイルの生産拡大も今年後半以降は鈍化する可能性もある。

世界の石油需要は、年末にかけて、インドのガソリン、ナフサ、LPGなど軽質石油製品需要が回復し、中国を含めたアジア需要も増加を続けることで、前年比150万バレル/日増加すると予想する。

世界の原油と石油製品の在庫は、10月-12月期には、前年比で減少に転じ、需給バランスは均衡化すると予想する。そしてフォワードカバー在庫日数は、4月時点65.9日から、12月末には60日程度まで低下すると予想する。

総じて、供給は、年末までに、OPEC加盟国、および米シェール生産量が緩やかに増加する一方で、需要は、今年7月以降、米国のドライブシーズン(ガソリン需要期)、中国、インドなど新興国におけるガソリン、ナフサ、LPGなど軽質石油製品需要の増加により、世界の現物在庫は10月-12月には前年比で減少に転じ、需給バランスは均衡化すると予想する。

原油先物相場の見通し

WTI原油先物価格(期近)は、4-6月期に、堅調な需要とOPEC非加盟国の順守率の向上などにより、下支えされることが予想される。ただ、年初からシェールオイル生産者による売りヘッジが活発となったため、10月-12月には米シェール生産量が上振れする可能性があるため、価格下落圧力がかかりやすい地合いとなると予想する。

これらを考慮し、当社は、9月までは50ドル-55ドルまでの価格レンジで推移し、10月-12月には60ドルまで上昇すると予想する。また、5月25日のOPEC総会で、9カ月延長が合意された場合、1カ月程度の間、ヘッジファンドのロングポジション構築などにより、50ドル台後半へ上振れする可能性があるものの、米シェールの生産量の増加とOPECの緩やかな増産により、上値は抑えられると予想する。

WTI原油先物平均価格は、4月-6月期は52.00ドルに据え置き、7月-9月期は56.00ドルへ1ドル上方修正、10月-12月は58.50ドルへと0.50ドル上昇修正する。1-3月期のWTI原油先物価格は、60.00と予想する。

ブレント原油先物価格については、4-6月期は54.00に据え置き、7月-9月期は58.50ドルへ1.50ドル上方修正、10月-12月期の同平均価格を61ドルへ1ドル上昇修正する。1-3月期のブレント原油先物平均価格は、62.50と予想する。

林田貴士(はやしだたかし)

アースエレメンツ・アドバイザーズ/リサーチ

スポンサーリンク
本サイトに掲載のすべての情報はあくまでも情報提供を目的としており、取引や投資に関する判断は利用者ご自身の判断でなさるようお願いいたします。これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社及び本情報提供者は一切の責任を負いませんので予めご了承ください。