エネルギー コモディティ

2018年原油市場の動向と見通し

Crude Oil

OPEC+ロシアと米シェールの戦い

原油先物相場の動向:WTI直近限月先物価格は17年6月の底値から約40%上昇

原油先物は、16年11月に決定したOPEC加盟国とロシアなど非加盟の主要産油国の協調減産により、余剰在庫が解消へ向かう中、今年6月21日につけた42.05ドルを境に上昇に転じた。その後50台を超えたものの、8月25日に大型ハリケーン「ハービー」が米テキサス州沿岸部を直撃したことで、原油在庫が増加し、8月31日には45.58ドルまで再び下落した。ただ、ハリケーンの被害は想定より小さかったことや、記録的な水準まで伸びた原油輸出により再び上昇に転じた。また、今月30日にウィーンで開かれるOPECと非加盟産油国の会合で、協調減産の延長が決定することへの期待により、ファンドなど短期筋がロングポジションを積み上げたことで、上昇が加速した。直近では11月16日にサウスダコタ州で起きた原油漏れの影響で、「キーストンパイプライン」が停止したことで、クッシング在庫が減少するとの見方も支援材料となり、11月24日には、引け値ベースで約2年5カ月ぶりの高値の58.95ドルで引けた。

石油輸出国機構(OPEC)と非加盟主要産油国の協調減産合意の効果

OPEC加盟国と非加盟の主要産油国は、昨年10月の生産水準を基準に、合計約180万バレルの減産に取り組んでいる。直近のOPEC月報によると10月OPEC原油生産量は、前月比15.1万バレル減の3259万バレル/日となった。サウジ、クウェートなどの減産努力に加え、イラク、ベネズエラの供給減少が寄与している。イラクの中央政府がクルディスタン地域政府(KRG)の支配するイラク北部へ進軍したことで、キルクーク地方からの輸出が減少し、イラクの生産量は前月比13.1万バレル減の438.3万バレル/日となった。また、ベネズエラの生産量は、ここ3カ月で約8万バレル/日減少し、10月時点で1989年以来過去最低水準となる186.3万バレル/日まで減少した。

その結果、9月末時点のOECD各国(≒先進国)の原油と石油製品を含む商業石油在庫は、前年比2.7%減の29億8500万バレルまで減少し、過去5年平均との乖離幅は1億5400万バレル(+5.4%)まで縮小した。海上在庫も前年比6.6%減の9億9700万バレルまで減少した。9月末時点で在庫のフォワードカバー日数は前年9月時点64.5日から62.3日まで減少し、過去5年平均との乖離は1.9日分まで縮小した(11月OPEC月報)。直近のIEA月報でも10月のOPEC原油供給量は前月比8万バレル減の3253万バレル、協調減産合意に対する減産順守率は87%となり、4月の96%からは低下したものの、高い水準を維持している。また、9月のOECD各国(≒先進国)の原油と石油製品の商業石油在庫は、2年ぶりに30億バレルを下回ったとしている。
*データは、11月のIEA、OPEC月報より

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米シェールオイルの驚異的な回復

米国の原油生産量は、ハリケーンの影響で一時的に減少したものの、11/22時点で、年初から71万バレル(約8%)増加し、過去最高となる、前年比97万バレル増(約+11%)の965.8万バレル/日まで増加した。米シェールオイルの生産量は、リグの生産性が掘削コストの増加を上回るペースで向上したことで、年初から133万バレル(約28%)増加し604万バレル/日に達した(10月平均)。主要シェールの生産コストが40-50ドルまで低下したことで、米石油生産会社が設備投資額を前年比で約40%増やしたことが生産量の急速な回復につながった。パーミアンシェールは、生産コストが1バレル当たり35ドル以下まで低下(当社推定)したことで生産量を伸ばした。そして、シェール企業が、原油のフォワードカーブがコンタンゴ(期近<期先)となった期間が17年に入りしばらく続いたことで、積極的に生産ヘッジをおこなったことも急速な生産拡大を可能とさせた。
*データは、EIAより

11月30日の産油国の会合で協調減産合意の期限延長は決まるか

11月30日に開かれるOPEC加盟国と非加盟主要産油国の会合で、現行の協調減産合意が延長されるか注目が集まっている。11月に入り、期限延長に支持が不可欠なロシアが6カ月または3カ月の延長案を協議していると伝えられ、9カ月延長を主張するOPEC側との意見が分かれている。また、OPEC内でも盟主サウジアラビアとカタールの対立が深刻化していることなどが理由で、通例となっている会合前の非公式の事前協議を見送ったことで、会合で足並みがそろわなくなることを懸念する見方も出ている。

当社は、基本シナリオとして、産油国は協調減産合意の9カ月延長を決定すると予想する。さらには、延長期間が6カ月となった場合においても、18年のOPECと非加盟の主要産油国の実質供給量に大きな変化はない考えている。その理由は、18年3月に行われるロシア大統領選と国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)である。世界の石油在庫が、OPECと非加盟産油国が目標としている5年平均には届いていない現在の環境で、サウジとロシアは、それぞれの事情により、原油価格を低迷を招く恐れのある政策をとることはできない。

ロシアでは、経済の停滞が続く中、18年続く長期統治に不満がくすぶっており、選挙で圧倒的な支持を見せつけられなければ、政権は揺らぎかねない。18年3月18日に投票が予定されている中、協調減産合意の終了または短縮化による実質的な供給増加で原油価格が再び低迷すれば、財政悪化により経済状況はさらに深刻化することになろう。財政の悪化に直面するサウジは、ムハンマド皇太子主導で経済改革を進めており、その改革の柱のひとつとなるサウジアラムコ社の新規株式公開(IPO)で18年にも株式の5%売却により1000億ドルの調達を目指している。ノルウェーの1兆ドル規模の政府系ファンド(SWF)が石油・ガス株投資から撤退する可能性が浮上している中、原油価格の低下は、アラムコ株への投資意欲をさらに低下させることになるため、避けなければならない。また、OPEC内で対立が続いた場合においても、協調減産合意に経済合理性がある以上、続けることへのメリットのほうが大きい。協調減産の経済合理性は今年の在庫削減ペースをみれば明らかである。

これらを考慮すると、当社は、基本シナリオとして、OPECと非加盟産油国の協調減産合意は、18年末まで9カ月間延長されると予想する。また、延長期間よりも重要となる、18年のOPEC加盟国と非加盟の主要産油国の原油生産量は、延長期間が6カ月となった場合も含め、今年17年10月時点から小幅な増加(10万バレル/日の増加)で推移すると予想する。当社は、18年のOPECの原油生産量は平均3270万バレル/日、ロシアの原油生産量は平均1100万バレル/日で推移すると予想する。

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2018年の原油市場の見通し

米国の原油生産量はシェールとNGL増加で過去最高へ

18年のOPEC加盟国の原油生産量は、ナイジェリア、リビアの生産量が増加する一方で、イラクは不安定な状況が続き、国営石油会社PDVSAがデフォルト認定されたベネズエラは、供給の減少が続くことで、+10万バレル/日増の平均3270万バレル/日となると予想する。

18年の非OPEC産油国の原油生産量は、米国のシェール、カナダのオイルサンド、英国のオフショア油田、ブラジルのディーウォーターの生産量が増加することで、前年比180万バレル/日増の5970万バレル/日と予想する。多くの米国シェール生産企業は、今年、投資計画を見直すことを決定し、設備投資額を引き下げた。ただ、主要シェールの生産コストが前年からさらに低下(パーミアンシェールの生産コストは前年37-38ドルから35ドル以下へ低下と推定)する中、主要シェール生産企業は、米石油リグの稼働数を増やし、生産ヘッジをおこなった。英エネルギー調査会社のウッドマッケンジー社によると、米生産会社は、17年第3四半期に新規に90万バレル/日相当のヘッジ取引をおこない、その大半は50-60ドルの価格レンジでヘッジされた。シェール生産コストの低下と生産ヘッジの増加により、当社は、18年のシェール生産量は前年比70万バレル程度増加すると予想する。また、シェールガスから併産されるNGL(Natural Gas Liquids、天然ガスから分離、回収される天然ガス液)の供給やメキシコ湾岸のオフショア油田の生産量も含めると、18年の米国の生産量は前年から130万バレル/日増加し、1550万バレル/日に達すると予想する。

インドと米国が需要をけん引

18年の世界の石油需要は、インドのガソリン、ナフサ、LPGなど石油製品需要拡大にけん引され、17年と同程度の増加となり、前年比150万バレル/日増の9910万バレル/日と予想する。16年の高額紙幣廃止政策の影響で鈍化していたインドの石油製品需要は、17年後半から回復に向かっており、18年の世界の石油需要をけん引するであろう。また、先進国では、米国の石油製品需要がポリエチレンなどの製造用のエチレンなど石油化学製品の需要が急速に伸びていることで、米国の石油製品需要は40万バレル/日程度増加すると予想する。欧州は、英国、スペインなどの経済成長は鈍化する見込みだが、フランス、スイス、スロバキアなどの成長が拡大することで、石油需要はほぼ横ばいとなると予想する。

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17年9月末時点のOECD各国(≒先進国)の原油と石油製品を含む商業石油在庫は、前年比2.7%減の29億8500万バレルまで減少し、過去5年平均との乖離幅は1億5400万バレル(+5.4%)まで縮小した。OECD各国(≒先進国)の石油在庫のフォワードカバー日数は前年9月時点64.5日から62.3日まで減少し、過去5年平均との乖離は1.9日分まで縮小した(11月OPEC月報)。当社は、世界の石油在庫は縮小が続くものの、18年4-6月期に余剰在庫が一時的に膨らむことで、フォワードカバー日数の過去5年平均との乖離が0に近づき、需給バランスが均衡化するのは18年7月-9月期となると予想する。

需給均衡化は先延ばし

総じて、OPEC原油供給量が小幅な増加となる中、米シェール、米NGL、カナダのオイルサンドなど非OPECの供給量が増加することにより、世界の供給量の伸びが、インドや米国にけん引される需要の伸びを上回ることで、需給バランスの均衡化は当初予想(前回見通しレポート発行時)より先延ばしになり、18年の7月-9月期となると予想する。

2018年の原油先物相場の見通し

当社は、WTI原油先物価格の取引レンジは45ドルから60ドルとなり、18年の平均予想価格を53.75ドルと予想する。18年は、原油先物相場は、センチメントドリブンからファンダメンタルドリブンのマーケットにシフトすると予想する。

WTI原油先物価格(期近)は、米国の原油生産量が伸び続ける中、北米、欧州、アジアの冬季需要が後退し始める3月から、世界の石油在庫が増加することで、下落圧力をうけると予想する。また、OPEC総会を3月に迎え、その後は大きなイベントが少なくなることで、原油、石油製品のロングポジションは、18年1月-3月には大幅に削減されることが予想されることから、売り圧力がかかりやすい地合いとなると予想する。

一方で、イラク中央政府とクルディスタン地方政府(KRG)の対立が軍事衝突へ発展した場合、現時点で60万バレルから20-30万バレルまで減少しているキルクーク地方の原油輸出がからさらに減少する可能性が高いことから、原油相場の買い材料となり、3ドルから4ドル程度価格を押し上げると予想する。

これらを考慮し当社は、WTI原油先物価格(期近)は、18年3月から5月にかけて、一時的な価格下落圧力により45ドルを試す可能性もあるが、堅調な需要により支えられ、平均で50ドルを維持すると予想する。一方で、地政学リスクの高まりにより上振れした場合においても60ドル程度が上限となると考える。

そして、WTI原油先物は、米国でクッシングと製油所をつなぐパイプラインの建設が進むことにより、クッシング在庫が縮小し、米国内の需給ギャップが縮小することで、ブレント原油と比べて底堅い展開となると予想する。当社は、ブレント-WTI原油期近先物の価格差は、現時点の6ドル付近から18年12月には4ドルまで縮小すると予想する。

林田貴士(はやしだたかし)

アースエレメンツ・アドバイザーズ/リサーチ

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